昨年の神奈川県10大ニュースに「横浜ベイスターズ売却問題」がランクインしました。住生活Gとの売却交渉が暗礁に乗り上げて今年も横浜に残留することが決定しましたが、親会社であるTBSの業績次第ではシーズンオフには問題が再燃することもあり得るので、県民としては心配が先延ばしになった感じは否めません。

しかし、売却交渉の中でプロ野球がかかえるいくつかの問題点が見えてきました。横浜ベイスターズは今後どんな道を選べばいいのでしょうか?少し考えてみましょう。



現在、プロ野球の球団経営で黒字なのは巨人、阪神、広島の3球団のみ。巨人、阪神は超人気球団として単独で黒字経営、親会社を持たない広島は伝統的な身の丈経営で黒字を堅持しています。しかし他の9球団は赤字ながらも、親会社からの補てんによって黒字を維持しています。

例えばヤクルト球団の場合、昨年は約20億円の赤字。ヤクルト本社の純利益が132億円であり、球団を保有することで社会的な信用を得る範囲内だとしています。
これに対して横浜球団は、親会社であるTBSが赤字。さらに放映権料の減収が響き、キー局として球団を保有している価値があるのかという問題になってきています。TBSは上場企業ですし、それらの説明を株主に対して明確に行う必要があります。

一方、昨年日本一になったロッテの場合、千葉マリンスタジアムの「指定管理者」となり、球場内での売上が過去最高の80億円を記録した結果、赤字はこれまでで最少の20億円になりました。最高の売上でも赤字額20億という数字は驚きですが、前年33億円だったことを考えると大きく改善したと言えましょう。そもそも「指定管理者制度」というのは、体育館やスポーツ等の公共施設を民間会社が委託を受けて管理する制度で、厳しい基準がある一方で「単独で行おうとすれば赤字」となる事業です。どちらかというとビルなどのメンテナンス技術を持つ事業者が、余った人材を活用して地域貢献するためにあります。大きな修繕は公の財産なので自治体の予算で行いますが、細かい日常の修理義務は管理者が行います。保険料も高く、運営委託料だけでの黒字転化は厳しい状況です。ロッテの場合は、指定管理者を取得することで運営の自由度が上がり、球場内での弁当や飲料の売り上げが球団の懐に入ってきます。その努力は球場に入ってみるとよくわかります。まるでMLBの「ボールパーク」を想像するかのような雰囲気で、売店の数の多さに加え、観客をエンターテイメントの世界に導く仕掛けがたくさん考えられています。

本来、親会社がユニフォームの胸に企業名を出すと「寄付金」として損金不参入となります。理由は親会社と子会社では経済活動は認められていないからです。一方、親会社以外ならば「広告宣伝費」として認められます。この点についてプロ野球とJリーグは税制上の特例措置を受けており、子会社が親会社の広告目的で存在している場合は「広告宣伝費」となることを認められています。しかし広告費にできるのは子会社の赤字額が限度です。なぜならば、必要以上の補てんは脱税の温床になるからです。

しかし、いつまでも20億円もの赤字に耐えられるとは限りません。横浜のように親会社が上場会社の場合、株主への説明をきちんとできないといけません。また、現在黒字である巨人でさえ放映権収入の減少に危機感を抱き、自前の球場を模索したり、新たなファン獲得に試行錯誤しているといいます。

横浜に話を戻しましょう。売却問題が浮上する前に、まず経費節減で乗り切ろうという話が先行して出てきました。二軍の湘南シーレックスを廃止するといった内容でした。最初は「あの一軍よりかっこいいとまで言われたシーレックスのユニフォームも見納めになるのか」という程度でした。違うユニフォームにするだけで1000万円以上のコストがかかるそうです。しかし具体的な売却問題が浮上すると、いわゆる球場使用料の話が出てきました。横浜は本拠地である横浜スタジアムに年間8億円の使用料を支払っています。また、球場内売店売上、広告、入場料収入の25%はスタジアムに入ります。他の球場に比べてボールパークのイメージが少ないのはこのためです。一方、ライバルとされた新潟は使用料2億円に加え、広告料やグッズ販売は球団にあげてもいいという好条件が伝えられました。かつて仙台市は当時の県営宮城球場を球団が修理する代わりに使用料を6200万円と低額に設定した上で、球場内売上も球団に入るシステムにすることで楽天球団の誘致に成功しました。

これに対して横浜市は球場使用料の引き下げを示唆しましたが、なかなかそうはいかない仕組みがあるのです。横浜スタジアムは民間有志によって建設されて市に寄贈されたため、市は開業の1978年から45年間は「株式会社横浜スタジアム」を管理権者として認めています。ですから本題はスタジアム側と球団との話合いになるのです。

プロ野球は元々「都市型エンターテイメント」でした。関東や近畿の大都市圏で比較的交通の便のよいところで観客を動員するスタイルです。一方、1993年にスタートしたJリーグは先行したプロ野球を反面教師にし、各チームの経営状態を公開させ悪い部分については経営指導まで踏み込んで行っています。Jリーグ百年構想の中では「街に緑の芝生やスポーツ施設をつくること」や「サッカー以外にもスポーツを楽しめること」として、より地域密着を鮮明にしてきました。地域密着という点では最近、楽天や日ハムなどのパ・リーグ組が成功を収めています。

そしてフっと湧いてきた「横浜ドーム構想」。建設には600億円という巨額な資金が必要です。しかし、球団引き留め案としての最大の問題はやはり賃借料でしょう。横浜球団が成功するには、都市型を目指すのか、それとも地域密着を目指すのか、その辺のかじ取りが大きなカギを握っていることは確かです。

これからの企業とスポーツの関係

Posted : admin / 2010.11.04

現在、川崎区の川中島地区では「川中島総合型スポーツクラブ」の設立準備が行われているが、自主運営のメドはたっていない。運営に最低限必要な会員数はおろか、活動種目も決まっていないのが現状だ。
スポーツ振興くじ(toto)の助成金を受けながら設立準備に取り掛かっているが、その助成も5年で打ち切られる。必要な財源は未だ不透明であり、役員は頭を悩ませている。totoの助成には、その用途に制限があり講師の派遣料(謝金)などが中心となる。用具の購入に充当できる費用は上限が設けられていたり、傷害保険料などは助成の対象外とされている。助成金を使える範囲で活動を行おうとすると、活動自体が成り立たないのが現実だ。
そこで、いかに自分たちで活動資金を集めることができるかが、総合型地域スポーツクラブが生き残る道なのである。

そんな中、地元地域の企業へ呼びかけ、2社から協賛を得てフラッグフットボールイベントが実現した。財源難に悩む総合型地域スポーツクラブの新たなスポンサーとなりえるのだろうか。企業スポーツが撤退する中、企業にとって何がメリットなのかを聞いてみた。

そのうちの1社である株式会社山根工務店は1902年(明治35年)創業の川崎市のゼネコン。現在は地元川崎駅周辺を中心に商業ビルや教育施設、賃貸物件を中心に施工を手掛け、川崎市において常に5本の指に入っている。
社長の山根崇さんは「以前、企業は積極的にモータースポーツに出資し、車体に会社の名前を入れて宣伝していた時代もあった。現在はそういった一方的な宣伝方法は時代遅れになっている。」という。
今回のイベントには協賛に加えて、従業員を派遣し支えてくれることを快く引き受けてくれた。当日、活動を手伝ってくださった営業部の上田泰人さんは「当社は川崎で商売をさせていただいている。地元でそっぽを向かれたら事業は成り立たない。」
お金ではなく人材を拠出することによって地域へ貢献する。そして従業員にもNPO活動を体験させることによって地域への愛情を育むメリットを強調されていた。

もう1社の有限会社明克は江戸時代から先祖代々川崎に住む旧家がルーツ。江戸末期の安政の飢饉には周囲の村に米を拠出したという古記録が残り、今でも伝わっている。当時は海苔養殖や農業を営んでいたが、戦後の高度成長期を境に不動産事業に転身した。
取締役の櫻井崇さんは「近江商人の家訓に『売り手よし、買い手よし、世間よし』とありますが、実は大切なのは『世間よし』なんです。スポーツにお金を出す理由はまちづくりに関与できるから」もし、地域への貢献できる要素がなければ、スポンサーは引き受けなかったという。

毎年、市が開催する「企業とNPOとの協働」をテーマにしたフォーラムでは「NPOが企業からどうお金を引き出すか」に質問が集中する。しかし、資金面での協力ではなく、普段社内ではできないNPO活動を社員に体験させる場として、企業とNPOがタッグを組む事ができたならばと思う。それが地元愛、地域貢献、愛社精神の構築につながっていく。

企業スポーツはお金と引き換えに宣伝という対価を得るという形で完結していたのがこれまでの形だが、地域への貢献という新たなスタイルを前にその役割が変革の時を迎えている。